LINE UP

Mercedes Geländewagen W460 Restmod

◦ 旧年式のGクラス W460のアップデート・レストモッド
1979年から1992年まで製造された、初代Geländewagen Gクラス W460
見切りの良いスクエアボディとドライバーズシートからの視認性の良さが相
まって非常に取り回しやすい。またAWDのW463とは違い、W460はパートタイムAWDな為リア駆動時は意外
に小回りが利く。
街乗りでも快適なサスペンションはロングストロークで驚くべき悪路の走破
性能を秘めている。
シンプルで魅力的な必要最低限な装備。
その他のオフロード車とは一線を画す唯一無二の車で国内外ファンが多い
が、決定的に’走らない’という欠点がある。
LWBなら特に登坂路では驚くほど失速し、高速道路も時速100kmの巡航もま
まならない。


いくら見た目が良くても、走らない車は『クール』じゃない。

オリジナルスペックは、230GE(ガソリン)で120PS/5,100rpm、19.6 kgm/
4,000 rpm 最高速度147km/h(AT)
300GD(ディーゼル)で88 PS/4,400rpm、17.5 kgm/2,400 rpm 最高速度127km/h(AT)
ディーゼルは特に車両重量はSWBでも2000kgを超える車両を満足に牽引でき
るレベルの出力ではない。
根本的な原因は旧世代の出力の低いエンジンと機械式の鈍臭いオートマチッ
クトランスミッションである。
弊社ではW460をエンジンスワップ、トランスミッションスワップ、マネージ
メントの見直しでこの欠点を克服した車両を3台製作しました。

①300GD LWB 1989

野外に野晒しにされていた所を偶然見つけた。
オリジナルのエンジンはエンジンブローし不動車になっていた。
・2018年1月 外装・内装のレストア開始

外せるものは全て外しレストアの下準備

・外装塗装・部品組付 内装は全てクリーニング、レカロシートはオリジナ
ルのファブリックを使って復元。

・2018年8月 オリジナルのエンジンを整備し走れる状態に復帰。内装外装
復元終了。
・2019年9月 現在のオーナーの出資を受けレストモッドを開始。
コンセプトは高速走行と街乗りを両立できるロードカー。
 エンジンはオリジナルのOM617からメルセデスM104 3.6AMG 直列6気筒
エンジンに変更。
 基となる設計はW463 G36 AMG。台数が少ない為、部品の調達に1年半を
要したが、入手困難な部品は全て3Dスキャンデータ化したため同じ部品を複
製できるようになった。

出力は280 PS/5750 rpm、 39.2kgm/4000 rpm
数値的には192PS、21.7kgmの出力向上。
・エンジンマネージメントはLINK ECUにてコントロール。

LINK ECUはレース業界でも使用される信頼性の高いECU。

・機械式のアクセルケーブルを廃止し、電子式アクセルペダルに変更。
M104 3.6AMGオリジナルの故障の多い電子スロットルを信頼性の高い
BOSCHの電子スロットルに変更。

・トランスミッションはメルセデス製 6速マニュアルトランスミッションに
変更。
 オリジナルの機械式の減速比は1なのに対して、6速マニュアルトランスミッションは0.82。
 この変更で数値的に18%の最高速度アップ。言い方を変えれば同じ速度で18%エンジン回転数を抑えられる。
・6速用シフトノブは株式会社日南様のご協力により、W460のオリジナル
5MTのシフトノブの意匠のままゲート表示のみを6MT用に変更。


・オリジナルグレードエンブレム製作
元のグレード表記は300GD、300は排気量、Gは
Geländewagen、 最後のDはディーゼルエンジンとい
う事。
 エンジンは3600ccガソリンエンジンに変更したので
エンブレムを360GE変更。

・ファイナルギアを変更、オリジナル4.88から4.11に変更。
 ギアは純正にない物なのでトルコのHTV Gear社で製作。
効果はトランスミッションの変更と同じで、18.7%の最高速度アップ。
 この二つの変更で、最高速度は220km/h 5500rpm(レブリミットは自主規
制) オリジナルから93km/hアップ。

・室内の防音、遮音、遮熱性の向上
欧州では当たり前のダイナマット、ダイナライナーを施工し対策。

・ミルスペック(軍用規格)の配線を用いてボディハーネスを全て製作。
この車両は製造から30年以上経過、自動車の配線は劣化します。

・エンジンの冷却はメカニカルファン、エアコン用の電ファンを廃止し、
PWMエンジンファン1個で制御。ラジエターはW463のものを使用し、冷却
水容量増加。
 これにより真夏の都心の渋滞においても、水温上昇は全くなくエアコンの
性能も飛躍的に向上し最高に『クール』な車になりました。

②300GD SWB 1982
2019年3月 外装の補修を開始
リアのオーバーフェンダーがパテ盛りされ、パネルの腐食も進行していた。

2019年7月 外装完成


2020年4月 現在のオーナーの出資を受けレストモッド開始。

オーナーはディーゼルエンジンが好きだと言うことで、太いトルクが低回転域から立ち上がるターボディーゼルと6MTの変更に決定。
フレーム側エンジンマウントの変更
この車両は1982年式で、W460の前期モデルにあたり1983年からの後期のモ
デルとはフレーム側のエンジンマウウントの経緯上が全く異なる。
前期の形状


後期のエンジンマウントの取付寸法図を元に変更


エンジンはオリジナルのOM617からOM606(DOHCディーゼルターボエンジ
ン)に変更。
OM606はW210世代1990年代中盤のメルセデスのエンジン。
出力は177 PS/3800-4400 rpm、 31.6 kgm/3600 rpm
数値的には89PS、14.1kgmの出力向上。
こちらの車両については、エンジンの制御は電子的な介入を極力減らし最小
限のメカニカルで制御。

・エアコンが付いていない車両だったのでW463の前期のエアコンユニット
を移植。
・トランスミッションは1台目と同じメルセデス純正6速マニュアルトランス
ミッション。
・ファイナルギアは4.88から純正のW460の純正で一番高い比率のギアセッ
ト4.375に変更。
これにより6速時、最高回転数4400rpmで最高速度は165km/hにアップ。
・1台目同様、エンジンの冷却はメカニカルファン、エアコン用の電ファンを
廃止し、PWMエンジンファン1個で制御。ラジエターはW463のものを使用
し、冷却水容量増加。


③230GE LWB EFI CONVERSION
230GEはガソリンエンジンで完調な状態では、出力的には足りるのではない
か?
またトランスミッションを多段化すれば快適になるのではないか?
スペックシート上では問題のない組合せを現実にするために、オーナーに出
資と車を提供していただきました。
オーナーの不満は、冬場にエンジンが掛かりにくい、エンジンが暖気後の再
始動性が悪い、走らない。
ほぼ全ての230GEが完調でない理由は、BoschのKE-Jetronic(エンジンマ
ネージメント)が完調でないからである。
この車両のコンセプトは信頼性と快適性の両立。
エンジンマネージメントをLINK ECUで電子制御化と6速マニュアルトランス
ミッションに変更することにしました。
230GEのオリジナルのエンジンはM102 2300cc 4気筒 自然吸気。
KE-Jetronicの水温管理は現在のものより高温な為(100℃を余裕で超え
る)、エンジン自体にダメージが大きい。
ガスケット抜け、バルブガイドのクリアランス大、アルミヘッド腐食などな
ど。
EFI化する事前準備としてヘッドO/H,タイミングチェーン周り等は最低限必
要な整備となる。


・フューズボード交換、配線引き直し

KE-Jetronicを廃止し不要になった部品と配線。これだけで
も軽量化できています。

・インジェクターのフューエルレイルを製作。
ディストリビューターを廃止し、オリジナルのディストリビューターのハウ
ジングを利用してカムポジションセンサーに変更。

2chのコイルパックで同時点火。電子スロットル化。
1台目、2台目同様、エンジンのメカニカルファンを廃止し、PWMファン化。

エンジンのスムースランニングはオリジナルのKE-Jetronicとは比べものにな
りません。
試運転の様子

結果として、4気筒のメリットとして、鼻先が軽い。トルクがあるので街乗り
で扱いやすい、
オリジナルのエンジンを活かした改良が功を奏し、バランスの良い印象の車
になりました。